久道進の日記帳

文芸同人サークル「Whatnot」活動報告/本、アニメ、映画、ボードゲーム等の感想・レビュー

ホラー

「少女禁区」

第17回日本ホラー小説大賞短編賞を受賞した表題作と、もう一本短編を収録した短編小説集。 受賞作「少女禁区」は、呪術師たちの生きる村で、親殺しの疑いのある強力な呪術師の少女と、彼女に玩具のように弄ばれることになった少年の物語。 もう一本の収録…

「都市伝説セピア」

朱川湊人さんの短編小説集。五本収録。 非常に良質な作品集でした。落ち着いた筆致で語られる物語。その最後は意外性があるだけでなく、何とも言えず味わい深いものばかりでした。 個人的には、一本目の「アイスマン」がお気に入り。最後が切なくも美しい。 …

「バースデイ」

鈴木光司さんの「リング」シリーズの短編集。「リング」「らせん」「ループ」を補完する作品でもありますね。山村貞子の呪いによって最後を迎える人の姿を描いた二つの話と、ヤマムラサダコの呪いから解放されたその後の世界を描くお話と。 映画版「リング」…

「トンコ」

第15回日本ホラー小説大賞短編賞受賞作の表題作含めて、三本のホラー小説を収録した短編集。 輸送中の事故により、一匹で山中をさまようことになってしまった食用豚のお話である「トンコ」。親から虐待されている少女が、幸せな家族になるために皆でゾンビ…

「雀蜂」

貴志祐介さん作のサバイバルホラー。一応ネタバレがありますので、未読の方はご注意下さい。 冬の山荘で目を覚ました男。彼は部屋に現れた蜂を見て、自分には蜂毒のアレルギーがあり、次に刺されたら命を失うかもしれないことを思い出す。季節外れの蜂の襲撃…

「ホーンテッド・キャンパス」櫛木理宇

第19回日本ホラー小説大賞・読者賞受賞作品。大学のオカルト研が主人公の、連作短編。 ユーモア青春ホラーといった感じの小説。オカルト研に霊に関する相談者がやってきて、依頼を受けて事件と対峙することになる、というのは王道ですね。起きる事件は割と…

「獣たちの夜 BLOOD THE LAST VAMPIRE」押井守

押井守さんによる「BLOOD THE LAST VAMPIRE」の小説。ヴァンパイアの戦いに巻き込まれてしまった、高校生政治活動家のお話。 伝奇小説というよりも、学生運動が盛んだった頃の高校生の青春を描いた作品というべきかもしれません。ヴァンパイアの設定やアクシ…

「きみの血を」シオドア・スタージョン

吸血鬼テーマの古典作品。上官を殴ったために本国へと送還された兵士、ジョージ・スミス。彼が上官を殴ったのはなぜなのか、そしてそのとき見せた異常な行動の秘密とは……。 吸血鬼が題材になっていますが、一人の孤独な青年の物語でもありますね。 最後に明…

「屍鬼 下巻」小野不由美

下巻。屍鬼に侵略されていく外場村。屍鬼の存在に気づいた尾崎敏夫は、事態を打開しようとするが、幼馴染であり友人でもあった僧侶の室井静信とは考え方の違いから別れることになってしまい、屍鬼の存在を訴えても親しい人間もそれを信じようとしない。孤立…

「屍鬼 上巻」小野不由美

積み本消化。発売当時買ったものなので、あの分厚いハードカバー版です。何年積んでいたんでしょう……。 土葬の習慣が残る村、外場村。村唯一の病院の院長である尾崎敏夫と、僧侶の室井静信は、不自然な死が村で続いていることに気づき、疫病を疑い調べ始める…

「スイート・リトル・ベイビー」牧野修

第6回日本ホラー小説大賞長編賞佳作。 育児で苦しんだ過去を持つ秋生は、ボランティアで児童虐待の電話相談員を務めていた。そこへある日、昔虐待の相談を受けた女性則子から電話がかかってくる。夫の様子がおかしいと話す則子の相談を受けることになってし…

「内宇宙への旅」倉阪鬼一郎

描き下ろし中篇を依頼された著者は、自分の小学生時代の曖昧な記憶を題材に作品を書こうとする。自分の記憶に悩みながら、著者は取材と執筆を続けていくのだが……。 SFホラー。なんともいえないユーモアを感じさせる作品でした。実感が伴わない記憶に戸惑う主…

「死国」坂東眞砂子

積み本消化。傷心を抱えて故郷の四国の田舎を訪れた比奈子は、そこで幼馴染の少女が18年前に事故死していたことを知らされる。その母親は、娘を甦らせるために、四国八十八ヶ所の霊場を死者の歳の数だけ逆に巡る「逆打ち」を行っていた。そしてそれが原因…

「物魂 ものだま」桐生祐狩

人形による復讐を描いたホラー小説。かつて世話になった人形修理師を探す人形好きの女性佑里子の話と、サブカル関係者を襲う凄惨な殺人事件が交互に語られていき、そして……。 恐怖はあまり感じませんでしたが、癖のある登場人物の描写が楽しかったです。でも…

「バイロケーション」法条遥

第17回日本ホラー小説大賞長編賞受賞作。一種のドッペルゲンガーもの。 自分と同じ姿を持ち、記憶も受け継ぎ、本物と区別できないドッペルゲンガー、「バイロケーション」。画家志望の女性忍は、バイロケーションに悩まされる人々の集う会に参加し、自分た…

「今昔奇怪録」朱雀門出

第16回日本ホラー小説大賞短編賞受賞の表題作を含む5編を収録。 「今昔奇怪録」は、町会館で見つけた町の怪異を記録した本、それを読み進めるうちに身辺で異常が起きていくというお話。記載されている怪異が実際にありそうで、そのアイディアが楽しかった…

「鼻」曽根圭介

第14回日本ホラー小説大賞短編賞受賞作。受賞作他、書き下ろし2編を収録。 人が皆株価で評価されるディストピア社会で、一人の男が転落していく様を描いた「暴落」。 ビルとビルの間の空き地に手錠で繋がれた男の悲劇「受難」。 人が「テング」と「ブタ」…

「ブルキナ・ファソの夜」櫻沢順

第3回日本ホラー小説大賞短編賞佳作の表題作と、書き下ろしの一本を収録。 受賞作は、旅行会社に勤め、不可思議なツアーを企画するため世界を飛び回る羽目になった主人公が、その旅の途上で自身が不可思議な体験をしてしまう、というもの。氷の下の救い主と…

「混成種 -HYBRID-」カシュウ・タツミ

第1回日本ホラー小説大賞佳作作品。 名誉欲の強い天才科学者の発明品が暴走し、恐怖の存在となってしまうというのは、娯楽SFホラーとしてはポピュラーな題材。それだけに、先の展開が予想できてしまって、少し物足りないところはありました。読みやすくて、…

「郵便屋」芹澤準

第1回日本ホラー小説大賞佳作作品。 忘れていた過去の罪が甦り、登場人物達に襲いかかるという、かなりオーソドックスなホラー小説。本当に正統派という感じで、意外な展開とかはあまりないです。落ちも普通で、あまり怖くはなかったかな。 ホラー小説の入…

「おしまいの日」新井素子

夫に精神的に依存し、献身的に尽くしてきた主婦が、不安と孤独から徐々に正気を失っていく様を描いたホラー小説。ヒロインの日記による独白と、周囲の人たちの視点と、二つの視点で物語は進んでいくのですが……個人的にはあまり好みではありませんでした。ち…

「姉飼」遠藤徹

第10回日本ホラー小説大賞受賞作の表題作と、他三篇収録の短編集。 表題作はエログロ系のお話? 舞台となっている地名などから考えると、ある種の寓話なのかなぁとも思いますが。 「キューブ・ガールズ」「ジャングル・ジム」は割りと普通のホラー。どちら…

「目を擦る女」小林泰三

七本収録の短編集。小林泰三さんというと、グロテスクな描写の小説が印象的ですが、この短編集は割りと大人しめでした。そのせいか、ちょっと楽しめなかった作品もあったり。コント調の作品は苦手だったりしますし。 表題作の「目を擦る女」と「脳喰い」「予…

『黒髪に恨みは深く 髪の毛ホラー傑作選』東雅夫編

髪の毛にまつわる怪談集。小説の他に、対談とエッセイ、マンガと戯曲の一部も収録されています。全十四本。 気に入った作品を三本挙げると、伊藤人誉さんの「髪」と加門七海さんの「実話」、それに泉鏡花の「黒髪」になるでしょうか。 伊藤人誉さんの「髪」…

「ブラック・ローズ」ナンシー・A・コリンズ

「ミッドナイト・ブルー」三部作の外伝ノベルで、TRPG「ワールド・オブ・ダークネス」の世界観で主人公ソーニャが大暴れする話……だと思っていたのですが、三部作と比べると割と大人しめのお話でした。敵も味方も皆殺しな展開になると思っていたのですが、予…

「蟲」坂東眞砂子

第1回日本ホラー小説大賞佳作作品。 タイトルから、かなりグロイ内容を想像していたのですが、その辺の描写は割とあっさり目でした。人に取り憑く蟲が現れるシーンも、それほど気持ち悪くはなかったですし。主人公の主婦の心が、徐々に追い詰められていくと…

「フォーリング・エンジェル」ナンシー・A・コリンズ

「ミッドナイト・ブルー」三部作完結編。女吸血鬼ソーニャの復讐譚もこれで終わりなわけですが……個人的にはちょっと物足りなかったです。宿敵モーガン卿との決着は割とあっさりしたものでしたし、人類の未来を変える使命を持ったレーテの話にしても、ほとん…

「白い部屋で月の歌を」朱川湊人

第十回日本ホラー小説大賞短編賞受賞作である表題作と、もう一編「鉄柱(クロガネノミハシラ)」収録。 表題作は、憑坐(よりまし)を務める、霊能力者のアシスタントが主人公のお話。日本ホラー小説大賞関連で、霊能力者がそのまま出てくるお話というのは珍…

『夜陰譚』菅浩江

ホラーと言うよりも、幻想小説やダークファンタジーと言うべき雰囲気の作品集。全部で九本の短編が収録されていて、内、書き下ろしは一本。他は、雑誌やアンソロジーに掲載された作品です。 分かりやすい怖いお話というのは少なくて、読了後ちょっと考えてし…