暗い話ばかりなのも問題なので、本の感想でも。TRPG熱再燃の影響で、長らく積読だったものを先日読了。ああ、久々ですね、これほどまでに王道の、剣と魔法のファンタジー小説を読んだのは。中学の頃は、ライトノベルでも海外ファンタジーでも、この手の「ソーズアンドソーサリー」ばかり読んでいたものですが、今ではすっかりご無沙汰になってしまってました。新刊も昔の作品の復刊も、ちゃんと買ってはいるんですけどね。最近は積読ばっかりです。
(ここからはネタバレが多いので)
で、久しぶりに読んだ王道のファンタジー小説。昔はまったシリーズもののせいもあるのでしょうが、むちゃくちゃ楽しんでしまいました。竜騎士とかそういった単語が出てきただけで心が躍りますよ。
収録作が外伝的な中編ばかりなので、長編である『戦記』や『伝説』と比べると盛り上がりに欠ける面はありますが、その分人物描写やテーマの表現は細やかで、よくまとまった良作になっていると思います。
『戦記』『伝説』の主人公で、英雄として称えられている第一世代と、その子供たちである第二世代。親子の血縁の問題や、偉大な父や兄弟に対して抱く複雑な愛憎を、過不足なく描いています。前作への思い入れが深い人ほど楽しめる作品でしょうね。
収録作は、初訳(だと思う)の「キティアラの息子」と、以前富士見書房で発行されていた『ドラゴンランス英雄伝』収録の「受け継ぎしもの」「賭けるか?」の三本。
個人的な好みだと、「賭けるか?」が一番好きかな。キャラモンの息子三人のユーモラスな冒険譚。スケールだけは無駄に大きいのだけど(なにせ神様まで出てくるのだから)、秘宝のある地までノームの舟で運ばれるというところからして、もうシリアスなものにはならないわけで。どこまでも間の抜けた展開の中であがいている三人が、気の毒でもありおかしくもあり。TRPGのシナリオにしたくなるような話でした。
初訳(だと思う)の「キティアラの息子」は、キティアラの邪悪さがよく分かるお話。昔も思ったけど、あんなおっかない人とよくタニスは付き合っていたものだ。そんな怖いキティアラとスターム(!)の間にできた子供、スティール。彼が己の出生の秘密を知った上で、善の道と悪の道、どちらを選ぶかまでが描かれているのがこの短編なわけですが……印象に残ったのは、ほんとキティアラの邪悪さというか、キティアラとスタームの因縁深さの方でした。『ドラゴンランス序曲 闇と光』でも、二人は一緒に旅してますし、運命というのは陰湿だなぁと思ったりしました。
「受け継ぎしもの」は、キャラモンとその息子の一人、パリンにスポットを当てたもの。叔父レイストリンに憧れ、魔法の道を歩もうとするパリンと、過去の悲劇のこともあり、それを許せずにいるキャラモンの葛藤。いつもなら子供の方に感情移入する私ですが、『戦記』『伝説』とつきあってきたため、どうしてもキャラモンに同情的になってしまいました。パリンの気持ちもよく分かるのですが。
ラストの、〈マギウスの杖〉がパリンの手に渡るシーンは、読み返してみても感動的。『英雄伝』のお話はあまりよく覚えていないけれど、「受け継ぎしもの」だけは忘れられないですね。
久々に読みましたが、ファンタジーものはやっぱりいいですね。なんかこのまま一気に、『ベルガリアード物語』とか揃えてしまいそうなのが怖いです。
……自重しような、少しは。

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