久道進の日記帳

文芸同人サークル「Whatnot」活動報告/本、アニメ、映画、ボードゲーム等の感想・レビュー

『吸血殲鬼ヴェドゴニア』

 同名ゲームのノヴェライズ。吸血鬼テーマで書きたいお話があったので、参考に手に取りました。
 ゲームのノヴェライズというと、小説になっていないようなひどいものが多いですが、本作はかなりしっかりと書かれており、最後まで楽しく読めました。多少、人称や視点が整理されていないところがあって、それは気になりましたが。
 物語の作りはかなり王道。吸血鬼に噛まれ「ヴェドゴニア(なりそこない)」になってしまった主人公が、元の体に戻るため、ハンターの手を借りながら、吸血鬼を擁する敵組織と戦っていくというもの。自分の持つ化け物の力に葛藤したり、親しい人が戦いに巻き込まれることに苦悩したりと、この手の物語で外せない要素はだいたい抑えてあると思います。王道のヒーロー・ストーリーの教科書としては、最適かもしれません。(でも最近のヒーローって、自分の力や戦いに悩むことってあまりないかもしれませんが。アメコミではまだあるかな?)
 不満点は、戦闘シーンの書き込みが足りないこと。あと、敵幹部の見せ場があまりないことでしょうか。クライマックスもあっさりめで、その辺はもう少し盛り上がりが欲しかった。ただ、エピローグの雰囲気は最高。定命の者と永遠を生きる者の別れ、その切なさがよく描かれているかと。ここだけでも読む価値はあると思います。
 ゲームの方は未プレイなので、原作との比較はできないですが、全体的に一作の小説としてうまくまとめあげていると思います。吸血鬼をテーマにしたダークヒーローものとしては、割とお薦め。