「SFファンタジー」のカテゴリには個人的に入れにくかったので、「その他小説」で。全11編収録のダークファンタジー小説集。
ダークファンタジーなので、読後の後味は悪め。というか、結構呆然としてしまう落ちが多かったです。突き落とされると言うよりも、突き放されるような感じと言うべきでしょうか。多分、ついていけない人も大勢いると思います。
収録作の一つ、「友の最良な人間」は世界幻想文学大賞受賞作とのことですが、私はあまり好みではないかな。ペットの犬を事故から助けたために、片足を失った青年。その彼にやがて告げられる、恐ろしい現実とは……落ちよりも、そこに至るまでの描写の苦みは好きです。
表題作「パニックの手」は落ちも決まっていて、一番のお気に入り。ある日青年が電車の中で出会った、美しい親子。饒舌な母親と、どもり癖のある娘。その母親は、突然青年を誘惑し始め、逃げようとした彼を、娘は必死に引き留めようとするのだが……誤読していなければ、落ちの皮肉さは最高です。
他で好きな作品は、「秋物コレクション」「手を振る時を」「きみを四分の一過ぎて」などでしょうか。この3作はダークファンタジーとは言い難く、人生の絶望的瞬間を切り取り描写したような作品なのですが、私は好きです。
「嫌な」お話が好きな方はどうぞ。
- 作者: ジョナサン・キャロル,浅羽莢子
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2006/05/27
- メディア: 文庫
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