久道進の日記帳

文芸同人サークル「Whatnot」活動報告/本、アニメ、映画、ボードゲーム等の感想・レビュー

『夜陰譚』菅浩江

 ホラーと言うよりも、幻想小説やダークファンタジーと言うべき雰囲気の作品集。全部で九本の短編が収録されていて、内、書き下ろしは一本。他は、雑誌やアンソロジーに掲載された作品です。
 分かりやすい怖いお話というのは少なくて、読了後ちょっと考えてしまうような、なんとも言えないモヤモヤが胸の内に残るような、そんな作品が多かったように思います。それとも、それは私が男だからでしょうか? この短編集、基本的に主人公は皆女性で、女の人の情念や狂気といったものが描かれているので、女性だったら考えなくてもすぐぴんとくるのかなぁ、とも思ったり。
「つぐない」「贈り物」「美人の湯」の三作は、割と分かりやすいお話でした。特に怖いホラーが読みたいというのなら、「つぐない」はお薦め。一種のストーカーものとしても読める作品で、やっぱり人間って怖いなぁと思わされます。「美人の湯」は、菅浩江さんなりのブラックジョークなのでしょうか? 女性が読んだら、色々思うところがありそうな小品ですね。

 男ではなく、女性が読んだらどう感じるか、それを聞いてみたくなるような作品集でした。

夜陰譚 (光文社文庫)

夜陰譚 (光文社文庫)