久道進の日記帳

文芸同人サークル「Whatnot」活動報告/本、アニメ、映画、ボードゲーム等の感想・レビュー

「白い部屋で月の歌を」朱川湊人

 第十回日本ホラー小説大賞短編賞受賞作である表題作と、もう一編「鉄柱(クロガネノミハシラ)」収録。
 表題作は、憑坐(よりまし)を務める、霊能力者のアシスタントが主人公のお話。日本ホラー小説大賞関連で、霊能力者がそのまま出てくるお話というのは珍しい気がします。
 傷害事件により体から抜け出てしまった少女の魂を受け入れた主人公は、その少女に恋したことがきっかけで、自分の存在に疑問を持ち始め、やがて……というのが大まかな話の流れですが、この作品はお話そのものよりも、文章から受けるイメージを楽しむ小説なんだろうなぁと思いました。タイトルが表す通り、月の光の中の儚い物語という感じがします。朝日が昇ると同時にすべて消えていってしまう、綺麗な幻の物語。
 その点を踏まえて、ラストの種明かしは、もっとぼかした書き方でもいいのではないかな、とも思ったり。少しばかり説明的すぎる気がしたもので。

 もう一本の「鉄柱」は、奇妙な因習を持つ田舎町を舞台にした話。町のある山の名前が志出山で、町の名前が久々里町。ここまでで、お話の鍵となる、広場にある逆Lの字型の鉄柱がなんのために使われるのかはぴんとくると思いますが……そう、それは自殺に使う、首吊り用の鉄柱だったわけです。ただし、その鉄柱を自殺に使うには、守らなければならない条件があって……。
 なんか、読んでいて息苦しくなりました。色々考えさせられるというか……ウツのとき読むと危険かもしれません、これは。お話としてはこちらの方が好みなんですけどね。

白い部屋で月の歌を (角川ホラー文庫)

白い部屋で月の歌を (角川ホラー文庫)