難聴者として生まれ、後完全失聴してしまい、はからずもサイボーグとして生きることになった著者による手記。人工内耳手術など、サイボーグ技術の存在は知っていたけれど、どういったものか詳しいことは知らなかったので、非常に興味深く読めました。
素人考えで、正しい装置が組み込まれれば、正しい音が聞こえるようになるものと、そう思ってしまいますが、ことはそう簡単にいくものではなくて。その人工内耳システムを使いこなし、脳が音声情報を正しく認識するよう訓練し学習しなければいけない、そのリハビリの大変さ。せっかく訓練したのに、ソフトウェアのバージョンアップによって「更新」されてしまう聴覚へのとまどいと不満。本書を読むと、人間の感覚の複雑さと、サイボーグ技術を利用していくことの困難さがよく分かります。
ですが同時に、訓練によって改善していく聴解力の話などを見ていると、人体の強さというか、生命の底力みたいなものも感じられます。
その他、日本とアメリカでの障害者に対する考え方の違いみたいなものも読み取れたり、手話コミュニティや聾社会との対立、問題なども書かれていて、色々と学ぶことが多かったです。
サイボーグ技術に興味のある方は、読んで損は無いと思います。
- 作者: マイケル・コロスト,椿正晴
- 出版社/メーカー: ソフトバンククリエイティブ
- 発売日: 2006/07/01
- メディア: 単行本
- クリック: 2回
- この商品を含むブログ (25件) を見る