優生学に取り憑かれた大富豪によって創設された天才精子バンク、その閉鎖までの顛末と、そこから誕生した子供たちの行方をまとめたルポルタージュ。
本書の題材にされている「レポジトリー・フォー・ジャーミナル・チョイス」ほど極端ではなくても、現在の精子バンクもドナーの優秀さを謳っていて、顧客はカタログから気に入ったドナーの精子を買っているわけで。生まれる前から遺伝子による期待を押しつけられている子供たちが、期待通り育たなかったら……そのときその子はどうなってしまうのか。この手の話を聞くたびに、いつも思います。
親が子に才能等を期待するのは当たり前ですが、それも度が過ぎれば重圧になってしまい、子供を壊す原因にさえなると思うのですけどね。「僕はいつも、お前は特別なんだよと言われて育ちました。でも、特別なんかでありたくはなかった」*1とは、レポジトリーから生まれた天才児ドロンが漏らした言葉です。
不妊治療等のことを考えれば、精子バンクの必要性というのも理解できますが……生まれた子供の立場に立つと、色々と考えてしまいますね。
ノーベル賞受賞者の精子バンク―天才の遺伝子は天才を生んだか (ハヤカワ文庫NF)
- 作者: デイヴィッドプロッツ,David Plotz,酒井泰介
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2007/11/01
- メディア: 文庫
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