久道進の日記帳

文芸同人サークル「Whatnot」活動報告/本、アニメ、映画、ボードゲーム等の感想・レビュー

「ブルキナ・ファソの夜」櫻沢順

 第3回日本ホラー小説大賞短編賞佳作の表題作と、書き下ろしの一本を収録。
 受賞作は、旅行会社に勤め、不可思議なツアーを企画するため世界を飛び回る羽目になった主人公が、その旅の途上で自身が不可思議な体験をしてしまう、というもの。氷の下の救い主とか、黄金の砂浜とか、お話の中に出てくる奇妙なツアー企画の数々が怪しげで面白いです。怖いホラー作品というより、幻想譚に近い気がしました。
 もう一本の「ストーリー・バー」は、お話を語って聞かせるバーを舞台に、物語の迷宮に捕らわれてしまった人間のお話。こちらもちょっと幻想的な雰囲気。
 幻から覚めた後、自分が見た幻はなんだったのかと、かえってその幻に捕らわれてしまうようなところは、両作共通ですね。異国のお話が絡むところも。怖いお話ではないですが、読後のなんとも言えない気分、白昼夢を見ていたような気持ちはやはりホラー。ちょっと「世にも奇妙な物語」を思い出したりもしました。

ブルキナ・ファソの夜 (角川ホラー文庫)

ブルキナ・ファソの夜 (角川ホラー文庫)

 余談ですが、これで日本ホラー小説大賞受賞作は、第4回までは全作読了しました。ブログに感想を書いていないのは、ブログを始める以前、学生の頃などに読んでいるので。今のところ受賞作で一番気に入っているのは、貴志祐介さんの「黒い家」でしょうか。
 第5回は受賞作無しなんですね。ですので次は、第6回受賞作のうち未読の、「スイート・リトル・ベイビー」を近いうちに読もうと思います。