痴漢冤罪に関して、コンパクトにまとまった入門書。痴漢現行犯逮捕のおかしさや、現在の取調べや裁判の問題点、痴漢冤罪によって失うものなど、一通りのことを知るには丁度良い本かと。最近出版された本なので、2008年始めに起きた、痴漢でっち上げ事件についても書かれています*1。他の事例や裁判例ももう少し載っていれば、参考になって良かったと思うのですが。
痴漢の疑いをかけられたときの対処法も載っていますが、どこまで有効なんでしょう? 痴漢の現行犯逮捕は、実際は現行犯逮捕と呼べるようなものではないので、犯人ではないと言って立ち去っても構わない、というようなことが書かれていますが、本当なんでしょうか? 現在の取調べや裁判のことを考えると、女性が袖を掴んだだけでも「身柄拘束」と言いそうですし、やましいからそれを振り切って逃げたのだ、なんて言いそうな気もするのですが。以下引用*2。
もともとホームの上で女性に「この人、痴漢です」と名指しされただけの段階では身柄拘束を受けているわけではありませんから、立ち去ろうとすれば、自由にできる状態であったかもしれません。この場合には物理的に立ち去ることができますから、立ち去っても構わないわけです。名指しされたからといって立ち去ってはいけないという法律はありません。
実際は難しいと思います。裁判で不利になる可能性も高い気がしますし。裁判例が増えないと、ちょっと判断しかねるところがありますね。
それにしても、確たる証拠もなく、被害者の証言だけで犯罪者にされてしまうことのおかしさは、もうちょっと皆真剣に考え、改善するべきだと思います*3。鉄道の職員も、痴漢の訴えがあったら、その場の乗客を止めて目撃証言などを集めるなり、連絡先を聞いておくなり、後の取調べや裁判をちゃんとするための努力はするべきだと思うのですが……どうにかできないものでしょうか……。
- 作者: 井上薫
- 出版社/メーカー: 日本放送出版協会
- 発売日: 2008/10
- メディア: 単行本
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