久道進の日記帳

文芸同人サークル「Whatnot」活動報告/本、アニメ、映画、ボードゲーム等の感想・レビュー

「九杯目には早すぎる」蒼井上鷹

 第26回小説推理新人賞受賞作「キリング・タイム」を収録した短編集。短編5本に、掌編4本が収録されています。
 短編には、どれもちょっと頼りない雰囲気の男が出てきます。その頼りなさ故に、どの男もどうしようもない結末に進んでいってしまいます。でも後味が悪くないのは、どこかユーモラスな雰囲気もあるからでしょう。
 短編はどれも好みでした。結末の妙では、作家志望者がストーカーのような共作志望者につきまとまわれる「私はこうしてデビューした」が一番。でも、たちの悪い上司に絡まれた故の悲劇である「タン・バタン!」と「キリング・タイム」の方が、作品としては好みです。上司のたちの悪さが他人事とは思えなかったり。
 探偵役がトリックを暴いたり事件を解決したり、というミステリーではないので、好みは分かれそうですね。

九杯目には早すぎる (双葉文庫)

九杯目には早すぎる (双葉文庫)