久道進の日記帳

文芸同人サークル「Whatnot」活動報告/本、アニメ、映画、ボードゲーム等の感想・レビュー

「肩胛骨は翼のなごり」デイヴィッド・アーモンド

 カーネギー賞ウィットブレッド賞受賞の児童文学作品。引っ越し先の家にあったボロボロのガレージ。その中で少年マイケルは、衰弱し汚れ果てた不可思議な男と出会う。重い病気を持つ赤ん坊の妹のために、沈んだ暮らしをしていたマイケルは、隣人の少女ミナと一緒に男を助けようとする……。
 静かな言葉で少年の日々が語られていく、味わい深いお話でした。赤ん坊の病に悲しみながらも、マイケルのこともきちんと気遣う両親。マイケルをそれとなく心配する学校の先生。変わらず友達であり続ける級友や、独特の感性を持つ隣人のミナ。そして、小動物を丸呑みし、決まったテイクアウトの中華料理を好む不可思議な男、スケリグ。マイケルと周りの人々との関係が、とても優しく描かれています。時に気持ちを乱すことがあっても、周囲の人々の気持ちを受け止めるマイケルの素直な振る舞い、それに向けられた視線も優しい印象です。
 静かでキレイな物語。良い現代ファンタジーです。

肩胛骨は翼のなごり (創元推理文庫)

肩胛骨は翼のなごり (創元推理文庫)