ネビュラ賞受賞作品。ロバート・J・ソウヤーの小説をちゃんと読むのは、これが初めてだったりします。
人間の魂と思われる「魂波」を発見した医学博士のホブスンは、研究のために自分の脳をスキャンし、精神のシミュレーションを三つ作り出す。一つは死後の生をシミュレートし、もう一つは永遠の生を、最後の一つは比較のために手を加えず今のホブスンをシミュレートするようプログラミングして。そしてある日、妻の浮気相手の男が殺される事件が起きてしまう。その後、妻の父も突然他界してしまい、自分が嫌っていた二人の死に、ホブスンは自分が作り出したシミュレーションへ疑いの目を向けるのだが……。
「魂波」の発見と社会への影響や、精神のシミュレーション、不老不死の技術等、SFのアイディアがいろいろ盛り込まれているSFミステリー。
妻の浮気を知り、苦しむホブスンに感情移入してしまい、読んでいてなんともつらい気持ちに。妻を寝取られた情けない男と思われているのではないかという、ホブスンの周囲への疑心暗鬼はよくわかりますね。個人的にはSFとしてのアイディアや設定よりも、この辺の心理描写の方が楽しめました。楽しめたというか、ほんとに感情移入してしまったというか……。
初版1997年ですが、ネットワークの描写に古臭さを感じさせないのはすごいなぁと思ったりも。
- 作者: ロバート・J.ソウヤー,Robert J. Sawyer,内田昌之
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1997/05/01
- メディア: 文庫
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