下巻。屍鬼に侵略されていく外場村。屍鬼の存在に気づいた尾崎敏夫は、事態を打開しようとするが、幼馴染であり友人でもあった僧侶の室井静信とは考え方の違いから別れることになってしまい、屍鬼の存在を訴えても親しい人間もそれを信じようとしない。孤立無援となった敏夫が何もできないなか、犠牲者は増えていき……。
吸血鬼ホラーであり、人間の業を描いた群像劇でもありましたね。村人たちそれぞれの最後が何とも印象的です。屍鬼の存在を認めようとしない者、村の異常に気付き逃げ出す者。屍鬼となってしまったことを苦悩する者もいれば、むしろそれを喜び村人を襲う者もいる。終盤、遂に村人たちが屍鬼の存在を知り、屍鬼を狩り始めるわけですが……凶行に走る村人と狩られる屍鬼の姿は、まるで人と化物の立場が入れ替わってしまったかのようにも感じられるものでした。凶行を正当化し、むしろそれを楽しんでいるかのような者もいて……現実の戦場で虐殺が起きるときというのは、こういう状態なんだろうなぁと思ってしまいました。
上下巻で分厚い小説でしたが、下巻を読むと、上巻の長さが、大勢の村人とその関係を丁寧に描くことが必要だったことがわかりますね。長さに見合う面白い小説でした。
- 作者: 小野不由美
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1998/09
- メディア: 単行本
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