久道進の日記帳

文芸同人サークル「Whatnot」活動報告/本、アニメ、映画、ボードゲーム等の感想・レビュー

「思い出のマーニー」

 スタジオジブリの新作アニメ。とても丁寧に作られた、児童文学のアニメ作品でした。
 育ての親への葛藤や自己嫌悪に苦しんでいる少女杏奈が、不思議な少女マーニーと出会ったことで、心が再生されていくという物語。
 見た直後は、マーニーの正体等を詳しく説明しすぎていて、それが物語の幻想性を弱めてしまっているように思えたのですが……本作のテーマの一つが、家族の繋がりや愛であることを考えれば、マーニーの正体の説明、マーニーと杏奈の関係についての描写は、やっぱり必要なものだったと思えるようになりました。それに、すべてが杏奈の空想だったとも、空想を通じて実際に起きた奇跡だったのだとも、どちらとも思えるぐらいの方が、この物語の奇跡としては相応しいようにも思えますしね。
 物語の最後、杏奈が見たマーニーが手を振る姿が、次の瞬間誰もいない窓辺と風で揺れるカーテンに変わったことで……マーニーの思い出は少し不思議な、少し不思議なだけの物語として、杏奈の中できちんと昇華されたことでしょう。ちゃんと少女の成長を描いているという点でも、とても良く出来たアニメ映画になっていると思いました。
 今後もこういった、丁寧な児童文学アニメが作られていくと良いですね。多くの子供が喜ぶ娯楽大作ではありませんが……こういった作品を必要としている子供たちも、きっと大勢いると思いますので。

思い出のマーニー〈上〉 (岩波少年文庫)

思い出のマーニー〈上〉 (岩波少年文庫)

思い出のマーニー〈下〉 (岩波少年文庫)

思い出のマーニー〈下〉 (岩波少年文庫)

特装版 思い出のマーニー

特装版 思い出のマーニー

思い出のマーニー (新潮文庫)

思い出のマーニー (新潮文庫)

新訳 思い出のマーニー (角川つばさ文庫)

新訳 思い出のマーニー (角川つばさ文庫)

新訳 思い出のマーニー (角川文庫)

新訳 思い出のマーニー (角川文庫)

 映画公開にあわせて、新訳本とかいろいろ出ているみたいですね。原作が気になったので、私も今日一冊購入してきました。