久道進の日記帳

文芸同人サークル「Whatnot」活動報告/本、アニメ、映画、ボードゲーム等の感想・レビュー

「きみと、波にのれたら」

 6月22日、友人たちと新宿で見てきました。湯浅政明監督最新作。

 事故で亡くなった恋人の港が、水を通してヒロインのひな子の前に現れるようになり……水の中の彼との交流を経て、ひな子が立ち直るまでを描いたお話。ラブストーリーであると同時に、喪失とその受容の物語でもありましたね。

 前半は、港とひな子が出会い、付き合うようになり、そして幸せな生活を楽しんでいる様子がとても丁寧に描かれています。その姿は、ほんとに幸せの絶頂といった感じで……だからこそ、恋人を事故で失った後、悲しみに暮れるひな子の姿にこちらも胸が塞がるような気持ちになり、彼の霊に依存してしまうのも仕方ないと思えてもしまいます。幽霊に依存するのは間違っているとわかっていても、今の彼女の「幸せ」が壊れないで欲しいと思ってしまったりもして……物語の後半は、幽霊となった彼や周囲の人々との交流を経て、ひな子が自分を見つめ直し、立ち直っていく姿が描かれているわけですが、見ているこちらも自然と、彼女を見守るような気持ちになっていきました。

 アニメならではのユニークなシーンや、迫力のあるシーンもあり……物語だけでなく、映像描写も堪能できました。

 非常に品のいい、きれいな作品。良い物語でした。

 余談ですが……港の妹の洋子が、個人的にはすごくお気に入り。不器用で意地っ張りなのに力強く前を向き、最後には自分の恋を実らせていたりして……いい子です。