久道進の日記帳

文芸同人サークル「Whatnot」活動報告/諸諸感想・レビュー等

「月とライカと吸血姫」

 共和国と連合王国による、宇宙開発競争が続く世界。連合王国に先んじようと有人宇宙探査を強引に推し進める共和国。彼らがロケットの安全性を確かめるための実験体として用意したのは、一人の吸血鬼の少女だった……といった感じのお話。
 現実の東西対立を模した架空の世界を舞台に、実験体として選ばれた吸血鬼の少女と、彼女の監視及び訓練指導員を務めることになった宇宙飛行士候補の青年の絆、そして宇宙開発への夢が語られた作品でした。
 人間を嫌い、人間に汚される前の宇宙へ行きたいという思いだけを抱いていた吸血鬼の少女が、真摯に少女を支え、同時に自身の夢を語る青年に対して徐々に心を開いていき……二人の間に確かな絆が結ばれていくまでが丁寧に描かれているお話でした。
 全体的にちょっと淡々としているところがあり……最後は理想論を語って終わってしまった感じもありましたが……雰囲気の良いお話で、個人的には結構好きな感じでした。お話が進むに連れてどんどん表情豊かになっていくヒロインの描写が特に良かったですね。