久道進の日記帳

文芸同人サークル「Whatnot」活動報告/本、アニメ、映画、ボードゲーム等の感想・レビュー

「ザ・ネゴシエーター ~人質交渉人~」

 人質救出のための交渉人、ネゴシエーターを題材にしたソロプレイ専用のボードゲーム。先日、ちょっと遊んでみました。

 ゲームの準備として……まず、人質の数や犯人の感情等を管理するための状況ボードを場に置き、その周囲に、犯人カード1枚と共犯者カード、犯人カードにあわせてその「要求カード:主目的」と「要求カード:逃走手段」を用意します。状況ボードの上には、犯人カードに書かれた各数値にあわせて、人質コマをその数だけ監禁場所のマスに、感情マーカーを感情レベル表のその数値の上に置きます。交渉人の会話ポイントマーカーは、最初は会話ポイント表の「0」のところに置いておきます。次に、イベントカードをシャッフルしてそこから10枚を山札として場に置き、危機的状況カードをシャッフルしてそこから1枚を山札の底にセットしておきます。残りのイベントカード、危機的状況カードは使用しないので、箱に戻します。交渉人が使用する会話カードを、その種類と手に入れるためのコストにあわせて、場の入手可能エリアに並べて置き……コスト0の会話カードは最初の手札として取ります。交渉ロールで使うダイスと、あまった人質コマを状況ボードの側に用意して……準備完了となります。

 手番は、説得フェイズ、計画フェイズ、イベントフェイズの順番で行っていきます。

 説得フェイズでは、手札の会話カードを自由に使用して、犯人と交渉することになります。会話カードの使い方は三つ……プレイエリアに置き、専用ダイスを振る交渉ロールを行ってその結果に従う。裏向きにして会話カードの捨て札置き場に置き、会話カードを手に入れるための会話ポイント表の数値を上昇させる。交渉ロールで失敗の「4」の目が出た際、2枚を捨て札にしてその目を成功に変える……となります。

 会話カードには様々な種類があり、交渉ロールで成功の目を出したダイスの数により、犯人の感情レベル表の数値を下げる、犯人の要求カードをオープンにする、会話ポイント表の数値を上昇させる、等の効果を得ることができます。より強力な会話カードには、人質の解放や交渉ロールで振るダイス数の増加、更には犯人の射殺等の効果があります。ただし、交渉ロールで失敗した場合は、会話カードの種類によって、犯人の感情レベル表の数値が上昇したり、説得フェイズが強制的に終了させられたりする等のペナルティを得ることになります。交渉ロールで振ることのできるダイスの数は、犯人の感情レベル表の数値によって決まります。感情レベル表の数値が最大値までいってしまうと、交渉ロールで振ることのできるダイスの数は減ってしまい……また最大値になっている段階で更に感情レベル表の数値が増えるペナルティが起きた場合は、その数だけ人質が殺害されてしまうことになります。逆に、感情レベル表の数値が下がると、交渉ロールで振ることのできるダイスの数が増え……また最小値になっている段階で更に感情レベル表の数値を下げることができた場合は、その数だけ人質は解放され、監禁場所に既に人質コマが無くなっている場合は、犯人を投降させることができます。

 説得フェイズを終えたら、次の計画フェイズに移ります。計画フェイズでは、説得フェイズで上昇させた会話ポイント表の数値でコストを支払い、入手可能エリアに並んでいる会話カードを手札に加えます。会話カードの入手が終わったら、会話ポイント表の数値を「0」にしてリセットし、その手番で使用した(プレイエリアもしくは捨て札置き場に置かれている)会話カードを入手可能エリアに種類ごとに並べます。その手番で使用した会話カードは、同じ手番でまた入手する、手札に戻すことはできないということです。

 計画フェイズを終えたら、イベントフェイズへと移り……イベントカードの山札から1枚を取り、その効果に従います。イベントカードは、人質が解放されるなどの有利な効果もまれにありますが、たいていは人質が殺害されたり、犯人の感情レベル表の数値が上昇するなどのマイナスの効果となっています。

 イベントフェイズを終えたら次の手番へと移り……勝利条件を満たすか、もしくは敗北となる状態になった時点でゲーム終了となります。

 勝利するには……監禁場所に人質コマが置かれていない、半数以上の人質コマが避難場所に置かれている、犯人を拘束もしくは射殺する、のすべて条件を満たす必要があります。人質コマが監禁場所に残っている状態で犯人を射殺してしまうと、共犯者カードの効果に従わなければならなくなったりもするので……まずは人質をしっかり救出することが大事ですね。

 敗北となる状態は……半数を超える人質コマが「死亡した人質マス」に置かれている、犯人が逃走する、イベントフェイズでイベントカードを引くことができなくなる、のどれか一つでもその状態になった時点でゲームオーバーとなります。ゲームで使用するイベントカードは、危機的状況カードを加えて11枚なので……プレイヤーが行動できる手番は基本的に12回。それまでに勝利条件を満たす必要があるわけですね。

 遊んでみたところ……難易度は少し高めの、やり応えのあるゲームであり……犯人との厳しい交渉を疑似体験できるかのようなゲームでもありました。最初は効果の弱い会話カードを使い、犯人をなだめたり、要求を聞き出したりして……より強い効果の会話カードを手に入れた後、人質を解放させたり、犯人を強く説得したりする。一度使用した会話カードは入手可能エリアに戻り、手札に加えるためにはまたコストを支払って入手する必要があるので、強い説得ばかりを続けることはできず……控えめな交渉と強気の交渉を繰り返しながら、徐々に事態を進めていくのも実際の交渉らしい感じのように思えました。

 交渉ロールの結果はダイスの出目次第なので、そこは運の要素もあるのですが……ままならないダイスの目が、不安定な精神の犯人との難しい交渉を表しているかのようでもありました。会話カードの組み合わせ、使い方により、ダイスの振り直しや、失敗の「4」の出目を成功に変えることもできるので、ダイス運だけですべてが決まるというわけでもなく……運と戦略のバランスが良いゲームだとも思いました。難易度は高いけれど、ギリギリ理不尽に感じないバランス。

 ルールを確認しながら遊んだ最初の1、2回は、やはり何をすればいいのかもわからない感じで……人質の大半が殺害されてしまったり、何もできないままイベントカードが尽きてゲームオーバーとなってしまったりもしましたね。会話カードの効果を把握し、勝利条件を満たすためにはどう進めていけばいいのかが朧気ながらわかってくるに連れて、救出できる人質の数も増えていき……数回のプレイで、どうにかゲームクリアできました。それでも、数人の人質は殺害されてしまい、イベントカードは最後の危機的状況カードが引かれ、もう次の手番は無いという、正にギリギリの状態でのクリアでしたが。最後の交渉ロールでダイスを振るときは、ほんとに祈るような気持ちでした。

 ゲームで用意されている犯人カードは3枚。最初に挑んだ犯人と違って、残りの2枚にはそれぞれ特殊条件があるみたいなので……また近いうちに、挑戦してみたいと思います。