日経新聞夕刊で連載されていた、朝井リョウさんの小説「イン・ザ・メガチャーチ」が、先日、最終回を迎えました。
最近のいわゆる「推し活」を題材にした作品。娘との関係や、自分が今までの人生でしてこなかったことについて悩みながら、推し活を仕掛ける仕事に携わることになった男性。その娘で、自分の性格等に悩みながら、やがて推し活にはまっていく女性。推していた芸能人の死をきっかけに、推し活から陰謀論へと依存の対象を変えていくことになる女性。三人の視点を中心に語られていくお話。
現代日本ならではの物語といった感じに思えました。インターネットの発達と普及によって、良くも悪くも日々様々な意見や考えに触れざるを得なくなり。どんな価値観も過剰に持ち上げられたかと思えば、必要以上に批判されたりもする社会。自分の芯を定めるのもなかなか難しい時代で、推しでも陰謀論でも、何か依存先を求めてしまう人も大勢いるのだろうなぁと思ったりもしました。
物語の終幕で、主要登場人物それぞれの気持ちに一区切りがついたようでもあり、でも何も変わっていないように思えるところもあり……すっきりしない気持ちのまま、最終回を読み終えました。
題材は興味深く、面白い小説だったとは思うのですが……どう評価すればいいのか、ちょっと考えてしまいますね。
6月21日からは、有栖川有栖さんの「折れた岬」が連載されています。