久道進の日記帳

文芸同人サークル「Whatnot」活動報告/本、アニメ、映画、ボードゲーム等の感想・レビュー

「死国」坂東眞砂子

 積み本消化。傷心を抱えて故郷の四国の田舎を訪れた比奈子は、そこで幼馴染の少女が18年前に事故死していたことを知らされる。その母親は、娘を甦らせるために、四国八十八ヶ所霊場を死者の歳の数だけ逆に巡る「逆打ち」を行っていた。そしてそれが原因のように、比奈子の周りで奇怪な現象が起きるようになっていくのだが……。
 故郷である村の人たちの、比奈子に対する態度が、なんというかリアルでした。閉鎖的というほどではないのですが、都会で暮らす相手に対してのやっかみや、微妙に存在する壁みたいなものが感じられて。一見純朴なように思えて、でもやっぱり内面は人間としてドロドロしたものがあるというのは、非常に現実的だと思いました。
 比奈子や、同じ幼馴染の文也の、自分の過去への思い、子供の頃の思い出を見つめなおすところなど、登場人物の心情面で読み応えがありました。
 お話は割と淡々と進んでいくところがあって、怪奇描写も淡泊な気も。ホラーというよりは伝奇小説ですね。最後は描こうと思えば、いくらでもスペクタクルにできたと思うのですけれど、そこは控えめにして、あえて人間関係のドラマとして閉じた描写にしたんでしょう。霊や怪奇現象をきっかけに、登場人物が過去や自分の人生と向き合うお話なんだと思います。

死国 (角川文庫)

死国 (角川文庫)