久道進の日記帳

文芸同人サークル「Whatnot」活動報告/本、アニメ、映画、ボードゲーム等の感想・レビュー

「The S.O.U.P.」川端裕人

 ネットワークの秩序をめぐって対決するハッカーたちの物語。そして同時に、自分の居場所を求める人間たちのお話。
 国際的に活躍する日本人ハッカーと、クラッカー集団の対決。クラッカー集団の巣窟となったオンラインゲームから、やがてネットワークの崩壊までお話は広がりますが……最後はあっさり終わってしまった気もします。その分、現実的ではありましたけど。
 インターネットやオンラインゲームをテーマにすると、ネットワーク犯罪か、もしくはオンライン上のバーチャル空間か、どちらかにテーマやストーリーが偏ってしまうことが多いと思うのですが、本作はその点ですごくバランスがとれているように思いました。インターネットも現実の一部であり、そのネットワーク犯罪によって現実に起きる問題が描かれる一方で、オンライン上の人間関係、ネット内に居場所を求める人間の心情などもしっかり書き込まれていますし。
 AIの扱い方などはとても興味深かったです。ネットやパソコンについての専門用語の扱い方も上手く、全体の雰囲気を盛り上げてます。ハッキング、クラッキングの過程など臨場感ありますし、格好良くも見えますね。映像にはできない楽しさでした。

The S.O.U.P. (角川文庫)

The S.O.U.P. (角川文庫)