久道進の日記帳

文芸同人サークル「Whatnot」活動報告/本、アニメ、映画、ボードゲーム等の感想・レビュー

「戦鬼 ―イクサオニ―」川口士

 第18回ファンタジア長編小説大賞大賞受賞作。古代日本風の世界を舞台に、桃太郎を基にした鬼の復讐譚。反乱を起こした桃生から神宝を取り返すために、桃生に討伐された鬼の生き残りである温羅、忌み子として虐げられてきた巫女の梓、下級役人の川楊が旅に出るというもの。
 ファンタジア長編小説大賞の大賞受賞作は、ライトノベルの中では割りと本格的な雰囲気の作品が多い気がしますが、本作も伝奇としてよく調べた上で書かれていると思いました。神話や昔話がうまく取り入れられていますね。
 仲間を殺され人間を恨んでいる温羅と、虐められながらも優しさを失わない梓の交流も無理なく描かれていますが……キャラのデフォルメに慣れたライトノベル読者には物足りないんじゃないかとも。描写も割りとあっさり目ですし。
 派手なライトノベルの中では、若干地味目だとも思いますが、一冊できちんとまとまった良作だったと思います。

戦鬼 ―イクサオニ― (富士見ファンタジア文庫)

戦鬼 ―イクサオニ― (富士見ファンタジア文庫)