久道進の日記帳

文芸同人サークル「Whatnot」活動報告/本、アニメ、映画、ボードゲーム等の感想・レビュー

「二人がここにいる不思議」レイ・ブラッドベリ

火星年代記」で有名なブラッドベリの短編小説集。全二十三編収録。解説文には「ジンワリいい話を集めた待望の短編集」と書かれていますが、収録作には怪奇譚や奇妙な味の小話もあって、いい話ばかりではないような気もしますが……。
 お気に入りの作品を幾つかあげると、タイムマシンを題材にとった希望溢れる話「トインビー・コンベクター」、ストレートな怪奇譚といえる「トラップドア」、終末の喪失感を想像させられる「最後のサーカス」など。「ローレル・アンド・ハーディ恋愛騒動」と「プロミセズ、プロミセズ」も好きな作品。「ローレル・アンド・ハーディ恋愛騒動」は男女の恋愛もので楽しいお話。落ちが爽やかすぎる気もしますが、お約束でもジーンときます。「プロミセズ、プロミセズ」は、逆にひどく生々しいラストが印象的。ある男女の別れを描いたものなわけですが……すごく女性の感想を聞きたくなります。同じ境遇に女性が立たされたら、やっぱりああ思うものなんでしょうか……。
 お気に入りまではいきませんが、「さよなら、ラファイエット」「バンシー」「ゆるしの夜」「かすかな刺」なんかも好きかな。表題作はちょっとぴんときませんでしたが。

 総評として。非常にバラエティに富んだ作品集なので、一本は気に入る作品が見つかるかと思います。ただ、詩的な雰囲気が強かったり、米国文化の知識がないと分かりづらい作品なども多いので、ダメな人はとことんダメかもしれません。一作品二十ページ前後と短めのお話ばかりなので、購入前に一、二編読んでみて、好みにあうかどうか確認してからの方がいいかもしれませんね。

二人がここにいる不思議 (新潮文庫)

二人がここにいる不思議 (新潮文庫)