久道進の日記帳

文芸同人サークル「Whatnot」活動報告/本、アニメ、映画、ボードゲーム等の感想・レビュー

SFファンタジー

「沈黙のフライバイ」

野尻抱介さんによる、宇宙開発を題材にしたSF短編集。五本を収録。 落ち着いた筆致で、宇宙開発に取り組む人々の真剣な思いや、独特な探求心、困難に挑む姿等が描かれていました。松浦晋也さんの解説にもありましたが……登場人物が基本的にとても理性的で、想…

「時の車輪第2部 聖竜戦記 5 復活の角笛」ロバート・ジョーダン

「時の車輪」第2部完結。今更ですが読みました。 「英雄蘇生の角笛」を取り戻すためのアル=ソアたちの旅と、罠にはまってしまったエグウェーンたちの戦いがそれぞれ描かれています。 登場人物が多いためか、ちょっとまとまりが悪かったような気も……クライ…

「リライト」法条遥

中学2年の夏、タイムリープの薬を使って十年後に跳んだことで、未来人の少年保彦を助けることに成功した美雪。だが十年後、来るはずの過去の自分は現れず、更に自分が知らない出来事や不可解な事件が美雪の周りで次々と起きていく。過去が変わってしまった…

「ターミナル・エクスペリメント」ロバート・J・ソウヤー

ネビュラ賞受賞作品。ロバート・J・ソウヤーの小説をちゃんと読むのは、これが初めてだったりします。 人間の魂と思われる「魂波」を発見した医学博士のホブスンは、研究のために自分の脳をスキャンし、精神のシミュレーションを三つ作り出す。一つは死後の…

「流れよわが涙、と警官は言った」フィリップ・K・ディック

歌手であり、テレビショーの人気司会者でもある男、ジェイスン・タヴァナー。意識を失った状態から目覚めた彼は、誰からもその存在を知られていない男になっていた。旧知の相手からも忘れられ、自分の存在を証明する記録もなくした彼は、警察に追われながら…

「神々自身」アイザック・アシモフ

積み本消化。 こちらの世界のタングステンと、平行宇宙に存在するプルトニウム186。それらを交換することで、無公害のエネルギーを手にすることになった人類だが、その交換には実は大きな危険が秘められていて……。 3部構成。第1部では、エネルギーの交換に…

「フランケンシュタインの方程式 梶尾真治短篇傑作選 ドタバタ篇」梶尾真治

表題作含めて6篇収録のSF短編集。コミカルでドタバタしたお話の中に、少しの毒が混ざったようなブラックユーモアのあるSF短編でした。 表題作で、「冷たい方程式」を題材にした「フランケンシュタインの方程式」と、味覚によってコミュニケーションをとる異…

「時の車輪第2部 聖竜戦記 4 大いなる勝負」ロバート・ジョーダン

積み本消化。3巻を読んでから、大分長い間放置してしまっていましたが……。 「英雄蘇生の角笛」を求める旅の中、貴族たちの陰謀のゲームに巻き込まれてしまうアル=ソアたち。わかれていた仲間たちと合流するものの、角笛は敵に奪われてしまい……。 細かいと…

「Fantasy Seller」新潮社ファンタジーセラー編集部編

ファンタジーアンソロジー。収録作は8作。新潮社編集部のアンソロということもあってか、掲載されている方は皆さん、日本ファンタジーノベル大賞の受賞者のようです。受賞作の関連作、スピンオフ等もあったり。 個人的なお気に入りは、不可思議な深夜バス車…

「空を駆けるジェーン」アーシュラ・K・ル=グウィン

「空飛び猫」シリーズ4冊目。 田舎の退屈な生活に物足りなさを覚えた末っ子のジェーンは、冒険を求めて都会に旅立つが……。 冒険とピンチ、そして手に入れた自分の居場所と生き方。自立や成長といったテーマや、いろいろな寓意がこめられているのでしょうけ…

「素晴らしいアレキサンダーと、空飛び猫たち」アーシュラ・K・ル=グウィン

文庫サイズの絵本。「空飛び猫」シリーズの三冊目です。 やんちゃで世間知らずなところのある猫アレキサンダー。家を出て冒険をしようとした先で木から下りられなくなったところを、空飛び猫の末っ子で、喋ることのできないジェーンに助けられる。その恩返し…

「蒼いくちづけ」神林長平

恋人に裏切られ、瀕死の状態になったテレパスの少女ルシア。彼女の憎悪の思念によって危機から救われた無限心理警察刑事OZは、月の都市で彼女の魂を救おうとするが……。 ルシアの事件を調査する月の刑事と、ルシアを利用しようとした犯罪者の対峙に紙幅の大半…

「題未定」小松左京

連載小説の題名が決まらないことに苦しむ作家「小松左京」が巻き込まれてしまう大騒動を描いた、ドタバタSF。題が決まらないことが、なぜか歴史を改変してしまう騒動にまで発展してしまい……。 主役が作家自身で、連載でのタイトルページや編集者の言葉まで作…

「ザ・ジャグル 汝と共に平和のあらんことを 1」榊一郎

大戦後、平和の象徴として建設された永久平和都市オフィール。その都市の裏側で、平和を演出するために、テロや犯罪事件そのものをなかったことにする組織「手品師(ザ・ジャグル)」の戦いを描いたお話。 連作短編の形で、1巻には3話収録。取材のため女性…

「ICO 霧の城」宮部みゆき

宮部みゆきさんによる、同名ゲームのノベライズ。ゲームは未プレイです。 頭に角を持って生まれ、「霧の城」に生贄として捧げられる宿命を背負わされた少年。その霧の城で、檻に閉じ込められた少女を見つけた少年は、少女を助けようとするが……。 よく出来た…

「超弦領域 年刊日本SF傑作選」大森望、日下三蔵編

年刊日本SF傑作選、2008年版。2007年版の「虚構機関」と比べると、濃い作品が集まっているように感じたのは私だけでしょうか? 好みの分かれそうな作品が多かったような気がします。傑作佳作が揃っているのは確かなのですが、苦手な人が多そうな作品…

「精霊の守り人」上橋菜穂子

正統派の国産ファンタジー。精霊の卵を宿した少年チャグムと、それを守る女用心棒バルサの物語。 落ち着いた話運びで、少年の成長が丁寧に描かれているのが好印象でした。シリーズ1冊目ということですが、本作だけでも非常にきれいにまとまっていて、満足度…

「遙かなる虹の大地 架橋技師伝」葦原青

第5回C★NOVELS大賞受賞作。橋を架ける魔術を使う架橋技師(ポンティフェックス)たちの物語。橋の魅力にとりつかれている主人公フレイは、師匠の汚名をはらすために、敢えて戦争に利用される道を進んでいくのだが……。 一冊で手堅くまとまっています…

「虚構機関 年刊日本SF傑作選」大森望、日下三蔵編

2007年度発表のSF作品のベスト傑作選。コミック1作にエッセイ1本を含めた16作を収録。傑作選の名前に相応しい贅沢な構成で、現在活躍されている作家の作品がしっかりまとめられている印象でした。これ一冊を読めば、読んでおくべき短編作品は最低限…

「護られし者 3 攻勢」ピーター・V・ブレット

第一部完結の第三巻。久しぶりに、新作ファンタジーをあまり積まずに読みました。 魔物と対決する力を得たアーレン、優秀な薬草師となったリーシャ、魔物すら惹きつけるバイオリンの才能を開花させたロジャーの三人が、いよいよ出会い、魔物と対決することに…

「護られし者 2 代償」ピーター・V・ブレット

アーレン、リーシャ、ロジャー、それぞれの青春編とも言えそうな第二巻。配達士として、薬草師として、旅芸人として、それぞれ修行を積みながら才能を開花させていく三人ですが、もちろん順風満帆とはいかなくて……試練や災難が容赦なく襲いかかっていきます…

「護られし者 1 萌芽」ピーター・V・ブレット

三部作第一部の、三分冊一巻目。夜になると恐ろしい魔物が現れるため、人々は護符に守られた家の中で震えて朝を待つしかない世界を舞台に、魔物に反撃することを願う少年アーレンの冒険を描く物語。中心となる主人公はアーレンですが、他に二人、賢く優しい…

「フリーランチの時代」小川一水

どっしりと力強かった「老ヴォールの惑星」と比べると、どちらかと言えば軽めのお話の短編集でした。全5篇収録。 表題作の、軽妙というか、どこかコントのように進んでいってしまうファーストコンタクトの面白みとか、「Slowlife in Starship」の、ニートの…

「まだ人間じゃない ディック傑作集4」フィリップ・K・ディック

積読消化の古典SF。8編プラス解説を収録。 割とストレートで、わかりやすいお話が多かったと思います。 「干渉する者」「かけがえのない人造物」「小さな町」が楽しめました。今読むと、ちょっと古く感じてしまうところはありますけどね。 表題作である「ま…

「機械どもの荒野(メタルダム)」森岡浩之

続けて小説も。 ソノラマ文庫97年刊行作の復刊。 発達した機械が人類に対して氾濫をおこした未来世界。スラムのような街、荒野をうろつく野獣のような機械たち。その機械を狩ることを仕事とする狩人のタケルが、会話機能を持った機械を狩ってしまったこと…

「ゴールデン・マン ディック傑作集3」フィリップ・K・ディック

積ん読消化だったのですが、図らずもタイムリーな読書になったようで。表題作が、映画「NEXT」の原作だそうです*1。 全7編収録。うち1本はファンタジーで、結構後味悪いです。 古い作品なので、まさに古典SFといった趣。短編なので、割りとわかりやすいお…

「スラムオンライン」桜坂洋

オンライン対戦格闘ゲームを題材にした青春小説。主な舞台となっているオンラインゲーム〈バーサス・タウン〉の雰囲気は、「バーチャファイター」を思い出させるものがありますね。 自己概念が乏しくて、現実でもオンラインゲーム上でも、世界との間に一枚膜…

「時砂の王」小川一水

小川一水さん初の時間SF長篇、とのこと。初めてとは思えないほど面白かったです。 時間SFとしてのアイディアがまず面白くて。襲いくる戦闘機械から地球を守り、人類が生き残る時間枝を作り出すために、積極的に過去に干渉し、改変しようとするというのは、結…

「そばかすのフィギュア」菅浩江

菅浩江さんの初期作品集。SF7編とファンタジー1編の、8編収録。 なんともいえない切ないお話が多かった気がします。でも読後感は悪くないです。切なくて哀しいんですけど、でもとても奇麗なものを見せてもらったという感じがするというか……うまく言えませ…

「目を擦る女」小林泰三

七本収録の短編集。小林泰三さんというと、グロテスクな描写の小説が印象的ですが、この短編集は割りと大人しめでした。そのせいか、ちょっと楽しめなかった作品もあったり。コント調の作品は苦手だったりしますし。 表題作の「目を擦る女」と「脳喰い」「予…