久道進の日記帳

文芸同人サークル「Whatnot」活動報告/本、アニメ、映画、ボードゲーム等の感想・レビュー

「そばかすのフィギュア」菅浩江

 菅浩江さんの初期作品集。SF7編とファンタジー1編の、8編収録。
 なんともいえない切ないお話が多かった気がします。でも読後感は悪くないです。切なくて哀しいんですけど、でもとても奇麗なものを見せてもらったという感じがするというか……うまく言えませんが。
 個人的なお気に入りは「雨の檻」でしょうか。世代宇宙船の無菌室で暮らす少女と、その世話をするロボット。二人の会話や互いへの気遣い、思いの描写がとても切なくて泣けてきます。胸が塞がる感じ。最後がまた……予想したものの一つ先を描かれていたのですが、それがまた泣けました。

 SF小説ではありますが、ハードな設定語りをする類の作品ではなく、登場人物の心情描写が中心なので、SF初心者にもお薦めできると思います。文章表現もとても美しいので、それだけでも読む価値はあるかと。

そばかすのフィギュア (ハヤカワ文庫 JA ス 1-4)

そばかすのフィギュア (ハヤカワ文庫 JA ス 1-4)