久道進の日記帳

文芸同人サークル「Whatnot」活動報告/本、アニメ、映画、ボードゲーム等の感想・レビュー

「神々自身」アイザック・アシモフ

 積み本消化。
 こちらの世界のタングステンと、平行宇宙に存在するプルトニウム186。それらを交換することで、無公害のエネルギーを手にすることになった人類だが、その交換には実は大きな危険が秘められていて……。
 3部構成。第1部では、エネルギーの交換による危険を巡って、対立する科学者の姿が。第2部では、この交換を始めた平行世界に生きるモノの社会が。第3部では月と地球、それぞれの住人の確執と、エネルギー問題の決着が描かれています。
 平行宇宙とどうにか情報をやり取りしようとし、やがてエネルギー交換の危険に気付いていく緊迫感のある第一部。平行宇宙の独特の社会と生態が興味深く、その宿命に物悲しさを感じてしまう第2部。そして月に住む女性と、月に移住しようとする地球の男、二人のラブストーリーの側面もある第3部。3部それぞれに違った楽しみが感じられる小説でもありました。
 手に入れた無公害エネルギーや己の権威に固執するあまり、その危険性を考えようとせず、その訴えにも耳を貸さない人々。震災後の今読むと、なんというか、他人事ではない現実の問題として考えさせられたりもしますね。

神々自身 (ハヤカワ文庫SF)

神々自身 (ハヤカワ文庫SF)