久道進の日記帳

文芸同人サークル「Whatnot」活動報告/本、アニメ、映画、ボードゲーム等の感想・レビュー

「ARIA」12巻

 最終巻完結。11巻の感想で「なんとなく終わりに向かっているような展開があって」と書きましたが、本当に終わってしまいました。物語内での灯里の言葉ではありませんが、永遠にこの穏やかな日常が続いてくれるような錯覚を覚えていただけに、終わってしまうのは残念でもあり、寂しい気持ちもあります。
 でも、ちゃんと物語を閉じつつ、次へと世界が受け継がれていく広がりも同時に描いた終わり方は、「ARIA」に相応しい温かさを感じさせるもので、とても良かったと思います。お話の内容から、物語を閉じないで、「いつまでもこの日常はこのまま続いていきます」という最終話にすることもできたと思いますけどね。でもそうしなかったのはすばらしい。これで最終巻が、若干駆け足気味でなければもっと良かったのに……とも思ってしまいますが、そこは贅沢な要求なのかもしれません。

 お話全体を改めて振り返ると……一人前を目指す見習いのお話というよりも、部活や専門学校生の日常のような印象を受けました。独り立ちする前の、仲間と楽しく何かを学んだり、将来を夢見たりしていたときの楽しさ、その雰囲気に近い気がします。頼りになる先輩がいて、語り合える仲間がいて。真面目に勉強もしているけど、気を張ってばかりではなくて。
 自分の学生時代を思い出すところもありますね。最終話、独り立ちした灯里の朝のシーンは象徴的かと。一人前になれたことは嬉しいけど、でも半人前だったとき、周りに大勢の人がいたときのことを懐かしく思い出し、今を少し寂しく思ってしまう……そんな経験は、誰にでもあるのではないでしょうか。この年で読むと、あのシーンは本当に胸を打ちます。

 物語内の世界全体のきれいさ、温かさは最後までぶれることはありませんでした。人によってはメッセージ性が強すぎたり、お説教臭く感じるところもあるかもしれませんが。この辺の匙加減は難しいものですが、私は高評価です。押し付けがましいところとか、「道徳」で人を攻撃しようとするところが無かったので。この辺りのバランスは本当に難しいものですけど。語って聞かせようとするというよりも、共に感じようとするように描かれていたのが良かったのかもしれませんね。

 他にも色々語りたいことはありますが、この辺で。
 何はともあれ、天野こずえ先生、お疲れ様でした。

ARIA(12) (BLADE COMICS)

ARIA(12) (BLADE COMICS)

 アニメのほうも最終回が近いですね。原作と同じ終わり方にするのか、それとも別な閉じ方をするのか。期待して待ちたいと思います。

 余談ですけど……灯里のメールの相手って、結局特定の誰かではなく、不特定多数の人に見せるものだったのでしょうか? ブログ投稿みたいなものだったのかな?