久道進の日記帳

文芸同人サークル「Whatnot」活動報告/本、アニメ、映画、ボードゲーム等の感想・レビュー

「地を這う魚 ひでおの青春日記」

 吾妻ひでおさんのアシスタント時代を中心に描いた自伝的コミック。
 まず画面の混沌さが楽しかったです。コマいっぱいに奇妙な動物やロボット、メカが動き回っていて。奴々も段々可愛く思えてきたり。出てくる人々も、普通の人間のように描かれているかと思えば、擬人化された動物の姿をとっている人もいて。漫画家を目指す若者たちの青春モノであると同時に、不条理ファンタジーを内包した作品にもなっています。ときどき悪夢のような光景に見えることもありますが。シュール。
 少しウツ気味というか暗めで、でもその辺をやり過ごしながらマンガを描いていくところには共感。漫画家志望仲間と喫茶店で怒鳴りあっているところでの、「これで全員素面だからな」には笑いました。身に覚えがありすぎて。
 昔のマンガ業界に詳しい人が読むと、他の楽しみ方もあるんでしょうね。その辺の知識の足りない自分が恨めしい……。