元判事の弁護士である著者が説く、日本の裁判の問題点と、冤罪や誤判が起きてしまう原因。あまり知られていない裁判官の日常生活や日々の仕事、それに今後改善していくための提言も記載されています。冤罪・誤判の具体的事件として、徳島ラジオ商殺し事件、袴田再審請求事件、長崎(痴漢冤罪)事件の三件について、特に紙幅を割かれています。
最近のいろいろな規制法案や条例絡みで、冤罪の危険性があっても裁判があるから構わない、というようなことを言って改正を強行しようとする人がいますが、その発言がどれだけ無責任で能天気なものか、この本を読むとよくわかりますね。一般市民にとって、逮捕と裁判というものがどれだけ人生を狂わせるか。証拠隠しや捏造によって、犯罪者にされてしまう恐ろしさ。痴漢の冤罪でも、ろくに話も聞いてもらえず、何十日も続けて拘束され、お金も職も信用も失ってしまうという怖さ。冤罪は他人事ではなく、そして気軽に考えていいものではないと痛感させられます。
警察に捕まった人や、裁判で訴えられた人を、即犯罪者扱いしてしまう風潮も、改善していかないといけませんよね。これは一般市民一人一人の心構えの問題ですけれど。
この本が発売されたのは2002年。それからもう8年がたち、「それでもボクはやってない」の影響もあって痴漢冤罪も知られ、裁判員制度も始まっていますが……実際の取調べや裁判は、どれだけ改善されているんでしょうね……。

- 作者: 秋山賢三
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2002/10/18
- メディア: 新書
- 購入: 3人 クリック: 32回
- この商品を含むブログ (21件) を見る