久道進の日記帳

文芸同人サークル「Whatnot」活動報告/本、アニメ、映画、ボードゲーム等の感想・レビュー

『ひぐらしのなく頃に 祭囃し編』クリア(感想ネタバレあり)

 ちびちび進めていた『ひぐらしのなく頃に 祭囃し編』、クリアしました。完結編に相応しい大団円エンドで、スタッフロールを見ながら感慨に浸っていました。ハッピーエンドになったことが嬉しかったり、終わってしまったことが悲しかったり。私は『目明し編』発売の直前に出題編のプレイを始めたのですが、もっと前から作品を追っかけていた人は、私よりも深く感動を味わっていることと思います。
 以下、感想というか、感じたことを適当に。

 導入部。鷹野三四をここまで掘り下げて描くとは思わなかったので、ちょっと驚いた。でもこの描写によって、鷹野さんがようやくただの怪しい悪役から脱することができたと思います。今まではどちらかと言えば、ネタとしていじられるキャラでしたから。施設での虐待シーンは怖い。この辺の演出はやっぱり上手いです。「おじいちゃんの、踏まないで」には泣きました。
 政治・歴史の話は、ちょっとくどいかな。もっとあっさりしていた方が良かったと思います。「読者諸兄は……」という語り方は、読み手が物語の中に入っていきにくくなるので、私は好みではないです。
 導入部ラスト、羽入と鷹野さんが対峙するシーンには引き込まれました。映画的な演出というか、こういったところは、ほんとに達者な作者さんだと思います。

 かけら紡ぎ。「完結編は選択肢有りのゲームにしたら面白そう」とは思っていましたが、こういった表現でくるとは思いませんでした。テーマともあっていて、真相の語り方としてはいいんですけど、ゲームとして面白いかというとちょっと微妙。作業の手間が増えるだけで、面白味はあまりないので。
 連続怪死事件の真相や各キャラの過去が語られて、今までで一番「解」してますね。一度は放棄されてしまったと思っていたので、怪死事件がちゃんと関連づけられているのは嬉しかった。雛見沢症候群については、もう少し説得力が欲しいところ。これは説明不足というよりも、前半の伏線が足りないためにそう感じるのでしょうけど。寄生虫云々というと、貴志祐介氏の小説を思い出してしまいます。*1

 本編。羽入の転校はまるで予想してなかった。驚いたというか、なんというか……コミカルなシーンは、今回バランスが取れていて普通に楽しめました。部活シーンは冗長に感じることが多かったので、毎回これぐらいの方が良かったかと。
 大人たちが格好良いのも今回の特長かな。赤坂はいくらなんでも強すぎると思いますが。大石さんと園崎家の和解は嬉しいところ。入江は普通の大人として格好良いと思います。富竹はギャグでもシリアスでも使えて便利だなぁ。
 最後の山でのトラップ戦は、『ぼくらの七日間戦争』とか思い出しますね。部活メンバーが強すぎかと思いますが、これは『罪滅し編』の圭一とレナの対決と同じ効果を狙っているのかな、とも。勝つための戦いというよりも、日常に戻るための儀式というか。圭一とレナの出番が少ないのは個人的にマイナス。盛り上げ役の圭一と、諫め役のレナ。二人のサポートあっての、リーダー魅音と私は思っているので。
 ラストは本当に大団円ですね。鷹野さんが助けられたことは意外で、賛否両論あると思いますが、この物語としてはあれで良かったと思います。敵を退場させてハッピーエンドというのは、この物語が目指したところではなかったでしょうし。それに鷹野さんの過去を考えると、ただ倒されておしまいではあまりに悲しすぎるし。他のシナリオでの行いから、その罪は許されるものではないとも思いますが、でも倒しておしまいにしていいものでもないでしょう。

 総評として。私は一年半ほど『ひぐらしのなく頃に』を追いかけてきたわけですが、十二分に楽しめたと思います。
 ミステリか否かに関して少し言うと、その表現方法や演出から、ミステリの範疇に入れても問題ないと思います。未知の寄生虫や超常現象が関わっていたとしても、それそのものはミステリーであることを否定するものではないと思いますし。ホラーミステリーやSFミステリーというのもありますし。
 ただ『ひぐらしのなく頃に』の問題点を上げるなら、前半で寄生虫等に関する伏線が足りなすぎたこと、それによって解答編の説得力が減じてしまったことだと思います。未知のもの、超常のものが絡んでいる可能性を、もっと前面に出すべきだったかな、と。あと、推理することを呷りすぎたのも問題でしょうね。もう色々なサイトで言及されていることですが。「正解率1%」というキャッチコピーにしてもそうですが、これでは出題編の情報から明確な解を導きさせるはずだ、そういう本格推理ものだと思われても仕方ないと思います。ルール推理に関して言えば、推理好きにとってみればそれはむしろ推理の入口にすぎなくて、やっぱりただの予想のレベルなんですよね。そこから、色々な情報や証拠を集めて、確固たる解を考え出すのが推理なので。そのためには事の原因や犯人は抜きにできないもので……この辺はもう、語り尽くされている問題ではありますが。
 何やら最後に不満を多く語ってしまった気もしますが、でもつまらなかったから言っているわけではなく、楽しかったから「もっと」を要求してしまっているようなものなので、どうかご容赦を。次回作は純粋に楽しみにしています。

 さて、積ん読になってしまっているコミックやアンソロジーも、一気に読んでしまおうかな。

*1:『天使の囀り』です