久道進の日記帳

文芸同人サークル「Whatnot」活動報告/本、アニメ、映画、ボードゲーム等の感想・レビュー

「ダークナイト」

 ようやく見たのですが、久しぶりにエンドロールまでじっくり浸ってしまいました。それほどまでに気に入りました。この「バットマン」の世界はやっぱり好きです。*1
 現実に近しい世界の中で、非現実的なアメコミヒーローであるバットマンをどう描いていくかというのが、新しい「バットマン」でのテーマの一つだと思うのですが。そのテーマを考えれば、本作「ダークナイト」のような展開になるのは至極当然とも思えます。悪人を倒してめでたしめでたし、とはいかないのが現実で。法治国家ならば悪人にだって人権はありますし。利害関係は複雑で、善人が罪を犯すことも当たり前で。バットマン自体が法を犯した存在でもありますし。というより、ヒーローという存在が、現実の中では矛盾した存在なんですよね。
 そのヒーローをどう描くか。現実にヒーローという存在は許されるのか。そういったテーマが込められているだけに、映画全体の緊張感や重苦しさがものすごいです。バットマンという存在の矛盾や限界を、容赦なく攻撃され続けるわけですから、見ていてすごく苦しい気分になったりもします。ヒーローの存在できない世界で、ヒーローであろうとすることのしんどさ、きつさ、厳しさ。そしてその果ての結末。ヒーロー映画によくあるような爽快感のある終わり方ではなくて、ほんとに浸りたくなるようなエンディングでした。
 バットマンを追い詰めていくジョーカーの悪意、その容赦の無さもすごかったです。本当に恐ろしい悪役。絶対に敵にしたくないというのもわかる存在感です。人間心理を弄ぶような振る舞いの一つ一つが本当に恐ろしく、えげつない。わかりやすい欲望は無く、秩序を揺さぶって遊ぶためなら自分の命だって平気で危険にさらす。最悪な愉快犯です。ほんと対峙したくないですね。
 そしてハービー・デント。アメコミの知識が無く、彼がコミックスでどういった存在だったのか知らなかっただけに、最後は本当にショックでした。薄暗く重苦しい世界の中、立場や価値観は違いながらも、バットマンとゴードンとデントが協力していく姿が一筋の光に思えただけに。素で「なんでこんなことに」と呟いてしまいましたよ。
 それでも、希望もきちんと描いているのがこの映画のすごいところ。バットマンの最後の決意もそうですが、悪意だらけの世界でも人間の心は醜いばかりではない点も描いています。ただ後味の悪い映画にしなかったところに、作り手のバランス感覚の良さがわかりますね。
 個人的には大満足でした。「バットマン ビギンズ」も好きだったので、3作目の製作も期待したいです。

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 それにしても、ヒース・レジャーの他界は残念ですね、ほんとに。まだ若かったのに……。

*1:評判今一つだったらしい「バットマン ビギンズ」もお気に入りなのですが。あの世界で、一つ一つ装備を整え、悪役と対峙していく過程は面白いと思うのですけどね。