久道進の日記帳

文芸同人サークル「Whatnot」活動報告/本、アニメ、映画、ボードゲーム等の感想・レビュー

「少年怪奇劇場 下巻」

 下巻。収録作は「ディープフリーズ」「仔鹿狩り」「近似死1/2」「彼女の字」に、書き下ろしの「高層階保健室」を加えた五編。書き下ろし以外は、登場人物や設定に関連があって、連作短編に近い形になっています。
 上巻よりは、ホラー色は強め。「仔鹿狩り」「彼女の字」は、結構ストレートな心霊現象が扱われていますし。町を走り回る運転手のいない白いバン、死者が送信しているのかもしれないメール……それでも、あくまで話の中心は、怪異にあった少年少女たちの心の動き。心理描写こそが作品の魅力になってます。
 個人的には「ディープフリーズ」が一番好み。次点は「仔鹿狩り」。
 書き下ろしは、短いながらも味わいのあるお話。不況の影響もあって追い詰められている男が、自宅高級マンションのエレベーターからなぜかおかしな保健室に紛れ込んでしまう。そこには、獣みたいな羽の天使がいて、悩みを聞きますというのだが……雰囲気作りと構成が上手い小品。
 ところで、「この国は深夜限り」は再録されないのでしょうか? 名作なのに……。

 短編集「非怪奇前線」は新書館から今月下旬発売予定だそうです。