老境に達した二人の精神科医、一方は無神論者のB、もう一方はカトリックのT。古い友人でもあった二人が再開し、自分の精神科医としての人生を振り返りながら、宗教をめぐる対話をする、という内容。
宗教だけでなく、政治思想や愛国心も含めて、信仰や拠り所を求めてしまう人間の心について語られていますね。
冒頭で語られていたエピソード、精神科医Tがカトリックに入信した際、母親が「死んでも、同じところに行けなくなる」という理由からカトリックに入信した話は、ちょっと考えさせられました。宗教や信仰なんて個人的なものだと思いがちですが、そうではないんですよね。信者にとって、家族の宗教が変わるというのは、切実なものがあるのでしょう。
人が宗教を求める気持ちや、信者になる理由もいろいろだということ。三大宗教の誕生に関する話等は興味深く読めました。ただ、国家や政治、過去の戦争等、それらの問題も無理に宗教や信仰心だけで語ろうとするようなところがあり、意見の展開が乱暴に思えるところもありました。乱暴というか、性急というか。対話の形をとっているため、まとまりに欠けているようなところも。
読後すっきりしないものが残ってしまいますが……いろいろ考えていく材料にはなりそうですね。
神、この人間的なもの―宗教をめぐる精神科医の対話 (岩波新書)
- 作者: なだいなだ
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2002/09/20
- メディア: 新書
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