久道進の日記帳

文芸同人サークル「Whatnot」活動報告/本、アニメ、映画、ボードゲーム等の感想・レビュー

「どろろ」

 手塚治虫さん原作の伝奇時代劇。大まかな設定は知っていましたが、ちゃんと作品を見るのは、今回のシリーズが初めてになります。

 国の繁栄のため、領主である父親によって鬼神の生け贄にされてしまった少年。肉体のほとんどすべてを奪われた状態で産まれた少年は、死体に義肢等をつけて供養する男に拾われ……成長した少年――百鬼丸は、自分の肉体を取り戻すために、鬼神との戦いの旅に出る。その旅の中で、百鬼丸どろろという幼い子供と出会うのだが……という物語。

 非常に良質の伝奇時代劇でした。自分の肉体を取り戻すための百鬼丸の戦いが、国の衰退や民の不幸を招くことになるという設定の残酷さがすごいですね。毎回語られるお話も、現実の非情さや人の業を伝えてくるものが多く……過酷で苦しい旅を続ける百鬼丸の姿に、胸を打たれます。

 強かでたくましく、でも年相応に弱いところもあるどろろとの触れ合いによって、少しずつ変わっていく百鬼丸の姿、その描き方も良かったです。

 そして、百鬼丸の弟であり……国のため、兄を切り捨てることを決意した多宝丸との戦い。多宝丸とその従者も非常に魅力的な人物だっただけに、彼らと百鬼丸の戦いは切なく痛々しいもので……彼らが手を取り合える道はなかったものかと、つい考えてしまったりもしました。

 残酷で苦しく、失われるものも多かった百鬼丸の旅ですが……最後に、人として踏み止まった彼の決断は尊いもので……その先に希望を感じさせる終わり方になっていたように思います。もっと暗いエンディングも予想していただけに……未来を感じさせる終わり方でほっとしました。

 良い物語でした。手塚治虫さんが描いたコミックの方も読んでみたくなりますね。

 

TVアニメ「どろろ」Blu-ray BOX 上巻

TVアニメ「どろろ」Blu-ray BOX 上巻

 
TVアニメ「どろろ」Blu-ray BOX 下巻

TVアニメ「どろろ」Blu-ray BOX 下巻