久道進の日記帳

文芸同人サークル「Whatnot」活動報告/本、アニメ、映画、ボードゲーム等の感想・レビュー

「ワンダーエッグ・プライオリティ」

 野島伸司さん原案・脚本によるオリジナルアニメーション。一応ネタバレがありますので、まだ見ていない方はご注意下さい。

 自分と深く関わりのあった少女が自殺し、その死を受け止めきれずにいる女の子たち。彼女たちは、死んだ少女を生き返らせるために、夢の世界で、様々な理由で自殺した少女たちの心を守るための戦いを続けていくのだが……といった感じのお話。

 思春期の女の子たちの、幼さ故の悩みや苦しみが、コミカルな描写を入れつつも、生々しく描かれている作品でした。

 自殺してしまった友人等を生き返らせるための戦いのはずでしたが……最終話でもある特別編の描写から考えると、死んだ人間が生き返ったわけではなく、死んだ人間が生きていたパラレルワールドによって現実を上書きしたような感じなのでしょうか? 目の前で生きている少女と自殺した少女はやはり別人であり、彼女たちは主人公たちと関わりの無かった世界でしか生きていられなかった……そう考えると、残酷で報われない話ですね。戦いを通じて出会い、一時は心を通わせ合ったはずの友達とも、戦いから離れるとともにその関係も薄れていき、やがて自然消滅してしまう……というのも、現実的ですが切ないです。

 傷を癒やすために身を投じた戦いで、結局新たな傷と苦しみを得て現実に戻っていくことになり……それでも、友人たちと共に戦った日々は偽りではなく、そこで確かに手に入れたものもある。青春時代の残酷さや切なさと共に、その美しさも手放してはいない作品だと思いました。

 よく理解できていないところや、腑に落ちない点も多々あるのですが……それ故に、いろいろ考察したくなってくる作品でもありますね。ちょっと人にはお勧めしづらいアニメではありますが……良い作品だったと思います。