今更という気もしますが、読んでみました。第十回電撃ゲーム小説大賞〈大賞〉受賞作。
噂には聞いていましたけど、確かに、前半と後半の展開の差がすごいですね。叙情SFのつもりで読んでいたら、途中から怪獣映画に変わってしまったような感じとでもいいましょうか。静かに亡んでいく人類を描いていく話のように思わせておいて、実は「訳も分からず滅びてたまるか」と戦う人間のお話だったわけで。第一章を読んでいたときは、後半の展開は予想できませんでした。
前半後半どっちの雰囲気が好きかと言えば、やっぱり前半の方になってしまいますけど。後半の主人公二人のすれ違いとか、実際の「反撃」のシーンよりも、前半の、人間が塩の柱に変わって、世界がゆっくり崩壊していっている雰囲気の方が好きです。ビジュアルを想像しても、塩の柱に変わった人間たちが、街中で風化していくというのは、なんとも言えず惹かれるものがあります。
と言っても、後半の展開が嫌いなわけではなく。人類愛とかそういうものではなく、ただ「自分の大切な人が、自分より先に消えるのを見るのは嫌だ」という動機で戦う主人公とか、リアルでいいなぁと思いますし。最後の反撃のシーンは、もうちょっと盛り上がりが欲しかった気もしますけど。
でも良作でした。前半の雰囲気で、なにか二次創作とか書きたくなってきてしまいます。
塩の街―wish on my precious (電撃文庫)
- 作者: 有川浩,昭次
- 出版社/メーカー: メディアワークス
- 発売日: 2004/02/01
- メディア: 文庫
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