正体不明の機械たちと人類が戦争を続ける世界で、戦う才能があるせいで英雄扱いをされてしまっている少年の物語。
物語の設定は割とよくあるもので、展開も予想ができてしまうのですが、主人公である少年の心理描写がしっかりしているので、感情移入して楽しめました。望んでもいない英雄扱いをされることへの苦悩。そのときの都合で白眼視したり持て囃したりする周囲の人間への苛立ち。戦うことに慣れてしまう自分自身への抵抗……かつて好意を持っていた少女との確執等もあって、少年の苦しみがよくわかります。それでも物語が暗くなりすぎないのは、少年が手に入れた新型兵器である戦闘用補助AI「エメラダ」との会話が、上手いバランスで救いになっているからでしょう。AIとの微妙に噛み合っていない会話が楽しく、徐々にお互いを信頼していく過程が気持ちいいです。
設定と物語の展開にもう一工夫欲しかったとは思ってしまいますが……でも気をてらいすぎるよりはいいのかもしれませんね。
イラストは少な目。敵兵器のデザインとか、イラストでちょっと見てみたかったです。
- 作者: 襟木ササ,平井久司
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2007/03
- メディア: 新書
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