表題作とその後日譚、そして初期短編作品の、合計三本収録。
表題作は、亡き妻を襲ったと思われる怪異から娘を救おうとする男ワタナベと、怪異の見える「親友」蟹喰菜々生のお話。なるしまさんの描く怪異の描写は本当に怖くて気持ち悪い。「不死者のあぎと」のまち針もそうですが、本来別に怖くも気持ち悪くもないものが、すごい嫌なものとして描写されていますね。
正気のまま、狂気やマイノリティを演じようとしている感のある蟹喰菜々生というキャラを、嫌味なものに見せない描き方も上手いです。
正体も対処法もわからず、因果も因縁もない怪異。その怪異との立ち向かい方は、現実の不条理との立ち向かい方でもあるのでしょうね。
初期短編作品の「きりんは月を食べる夢を見るか」は、表題作とは違って、結構ストレートな思春期の少女のお話という印象。一応怪異も絡んでいますが、女の子の気持ちの方が主題ですね。可愛らしいお話という気もします。
- 作者: なるしまゆり
- 出版社/メーカー: 新書館
- 発売日: 2010/02/25
- メディア: コミック
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