「日帰りクエスト　全四巻」神坂一

　本の整理中に、つい全巻読み返してしまいました。懐かしい作品。ライトファンタジーお約束の設定を捻ったギャグ等は、「スレイヤーズ」と共通するところがありますね。お約束を知っていると余計に笑える面白さ。
　異世界に召喚された現代日本の女子高生エリ。お試しで呼ばれた彼女はすぐにもとの世界に戻されそうになるが、せっかくの非日常的体験の機会を逃すまいと、自分を呼び出した魔道士を脅して毎週異世界に呼ぶ約束をさせてしまう。観光気分で異世界を訪れるエリは、お気楽なノリで竜人の侵略戦争にも関わっていくのだが……。
　傍若無人な「遊び人レベル１」のエリの思いつきの行動や、現代日本の価値観による発言等が、人間と竜人の戦いに一石を投じ、事態を進展させていくのが面白いです。キャラ同士の軽妙なやり取りも楽しい。
　エリは最後まで「遊び人レベル１」のままですが、学生生活に不満を抱えて愚痴ばかりだった気持ちが前を向くようにもなっていって……その点ではきちんと成長物語にもなっているんですよね。関係が好転しかけた竜人との別離にはほろ苦さもあったりして。
　全四巻できれいに完結した、良いライトノベルだったと思います。多少、思い出補正はあるかもしれませんけどね。