久道進の日記帳

文芸同人サークル「Whatnot」活動報告/本、アニメ、映画、ボードゲーム等の感想・レビュー

「リコリス・リコイル」

 人知れずテロや事件を解決し、日本の治安と平和を維持するために戦っている少女たち。「リコリス」と呼ばれる彼女たちによって解決した事件は、表向きには事故等として処理されていき……リコリスの犠牲によって、日本の平和の幻想は保たれていた。そんなリコリスの一人である井ノ上たきなは、命令違反を理由に所属していた組織をクビになり……依頼を受けて裏仕事をする、表向きには喫茶店の「リコリコ」で働くことになる。そこで、リコリスとして天才的な才能を持つ錦木千束と出会い、たきなの運命も大きく変わっていくことになるのだが……といった感じのお話。

 少女二人の関係が丁寧に描かれた作品であり……かっこいいガンアクションが堪能できる作品でもありました。

 リコリス以外の生き方を知らなかった少女たきなが、不殺のリコリスとして敵を殺さず仕事をこなし、普段は天真爛漫な笑顔で日常を大切にしている千束と過ごすことで、少しずつ変わっていく。やがて千束に隠されていた秘密が明らかとなり、その運命に共に対峙することになる……二人のキャラクターが非常に魅力的で、見ていて自然と感情移入できる感じになっていました。二人のやり取り、掛け合いも楽しい。最初はかみ合っていなかった二人の関係が徐々に深まっていき、やがて掛け替えのないパートナーになっていく様子には、バディものとしての楽しさもありましたね。

 少女たちの犠牲によって「平和な日本」の幻想が保たれているという設定は、現在の日本に対しての風刺っぽいところもあるように思えました。最後の展開はかなり強引なところもあり……あの世界の日本の幻想が守られてしまったことは果たして良かったのか、少し悩んでしまうところもありますね。

 総じて……設定面や最後の展開等、少し引っかかるところもありましたが、少女二人の絆を描いた物語として、またかっこいいガンアクションを描いた活劇として、楽しい作品でした。